読書感想文100本ノック
カルステン・ヘン『本と歩く人』を読んだ。なんだがめちゃくちゃ売れていて映画化もされた作品らしい。そりゃそうだよねっていう納得の一冊だった。 主人公のカールは書店員で、顧客が好きそうな本を家に届ける仕事をしている。毎日顧客の顔を浮かべながら一…
『ムーミンパパ海へいく』を読んだ。ムーミンシリーズ最後から2番目の作品で、シリーズでムーミン一家が出てくる最後の作品だ。最後の最後でムーミンパパの印象がガラリと変わってしまった。良くない方に。 平和なムーミン谷でやることがなくなったパパは、…
蛍 光源氏が気持ち悪い!いや彼がそうなのは今に始まったことではなく、ずっとそうだったのがマックスに高まったというか。 今は亡き若かりし頃の恋人の娘の玉鬘に言い寄っているところもなかなかなのだが、マックスに気持ち悪いのが帖の題にもなっている蛍…
オスカー・ワイルド「幸福な王子」を久しぶりに読んだ。こんなに政治的な話で、格差社会を書いたものだったとは。貧富の差がすごい。 再読するまでは、王子の自己犠牲精神や貧しい人達への思いから、王子のことを美しく素晴らしい人なんてイメージを持ってい…
フィンランドに行く前にムーミンシリーズを読もう気に入ったのがあったら原書をアカデミア書店で買おう、と思っていたのだけどどれを買うのか決まったかもしれない。それくらい『ムーミン谷の仲間たち』が良かった。 『ムーミン谷の仲間たち』は、シリーズ唯…
薄雲 明石の君と光源氏の娘、明石の姫君が紫の上に養育されるため、明石の君や尼君と離れ離れになれ引っ越す帖。 明石の君が、姫君のために「光源氏と紫の上に任せた方がいい」と、姫君と別れることを決めたけど、悲しくて悲しくて自分の選択は本当にあって…
須磨 天皇に仕える尚侍であり、政敵右大臣の娘である朧月夜との関係がばれた光源氏。 このままでは大きなお咎めを受ける可能性があるので、その前に自ら須磨に引っ込むことにする。 「須磨に行くことになりました」ということを今まで関係のあった女たちや、…
「でも、私、ひどいことをされたわけでもないし、こうやって育ててもらってきたんだよ」 母は言葉はきついし、私が意見を言ったり、反論したりすることを許さなかった。感情的で他人に厳しい人ではある。だけど、暴力を振るわれたこともなければ、育てること…
拝啓 渡辺祐真さま 突然のお手数失礼いたします。 スケザネさまと宮田愛萌さまの往復書簡『晴れ姿の言葉たち』を読ませて頂きました。読んだらとても手紙が書きたくなったのでこうして、書かせて頂いています。 スケザネさまはこの手紙を読むことはないかも…
なぞるように、私はこれからも生きていく。それがどれくらいの時間か分からない。これが、もっと前の自分だったら、よかった。叶えたい夢とか、一緒にいたい人とか思い浮かべることができた。そこに向かって努力しようと思えた。辛いことや手に入らないもの…
ハグは、猫のための餌と水をすこしのためらいもなく床に落として、少し獣臭のする左手と、濡れた右手で、薗のことを抱きしめ返した。ハグの両手は「ゆうき」の両手だった。 薗は、骨ばかりの、異物だらけの躰のままで、わたしはハグのことが好きだと、啓示に…
海外文学に感じるハードルの高さは、宗教や哲学などなにかと抽象的で重い話や、政治社会問題など具体的で難しい話になりがちなところにあるんじゃないかと思う。 グレアム・グリーンの『情事の終り』は、男女感のごたごたという他人事としてゴシップ的に軽く…
アンが直線道路を疾走し、最短距離で目的地に到着していたら、映画は始まった途端に終わってしまっただろう。そうやって遠回りをして、止まって、休みながら行く鈍行の旅程の中に、自分の意図や計画から外れた「事件」を引き寄せてくれる誰かがいたからこそ…
アートディレクターの森本千絵さんが「欲張りってチャーミングっていうか生きる力になる」というようなことを言っていて、私はそれを聞いて励まされたというか明るい気持ちになり「やりたいことなんでもやってみよう!」と前向きになったのだが、それから1…
『片付かないふたり』は、2024年集英社ノベル大賞準大賞を受賞した村崎なつ生のデビュー作。 帯にある、選考委員三浦しをんの選評「人物の内面を丁寧に描写し、深く潜っていくだけで、小説は成立するものなのだ」という言葉通り、人物の心情を丁寧にひとつひ…
「時間を金で売っているような気がする」というフレーズを思いついたが最後、体が動かなくなった。働く自分自身にではなく、自分を契約社員として雇っている会社にでもなく、生きていること自体に吐き気がしてくる。時間を売って得た金で、食べ物や電気やガ…
grokにおすすめの本を聞いたら売ってもいないしそもそも存在もしない本を創作してすすめられたり、途中までしか邦訳されていないシリーズの邦訳されていない巻をすすめられたりして、「なんで読めない本をすすめるんだ!」とキレて若干喧嘩をしたことがある…
写真をやっていた時、担当教授に「被写体との距離がありどこか冷めている。あなたは人に対してもそうだけど」と言われたことがあり、バレてたのかと思ったことがある。 私は確かにそんなところがある。 それが現実にいる人だけではなく本の中の人に対しても…
「誤解を招いたら」とか「ご不快にさせて」を前置きにする謝罪ではなく、本当に誠実な謝罪ができる人を尊敬する。誠実な謝罪とは何か。 古田徹也『謝罪論』によるとそれは、自分がしたことを理解していて、相手がどんな気持ちになったのかも理解していて、ど…
あまり大きな声では言えないが、江戸川乱歩が好きである。独特の世界観を持っていて奇妙でおどろおどろしくて怖いもの見たさを満たしてくれる。いわゆる変態といわれるような作家なので、大きな声では言いにくいが。 同じような作家に谷崎潤一郎もいる。でも…
「今からでも変えないと。事業主ではなく労働者、仲介者ではなく雇用主なのだと知るべきだ。 労災保険もないし、費用も全額自己負担。そんなのありか?現代版の奴隷制度じゃないか。 産業革命時代に逆戻りしたも同然だ。奴隷だよ、奴隷。勉強しないと抜け出…
本来の経営は「価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的にむかい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実践を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」だ。 上記の経営の概念を家庭、恋愛、就…
言葉はただそれだけだと思う。 言葉にできない感情は、じっと抱いてゆく、 魂を温めるように。 その姿勢のままに、言葉をたもつ。 じぶんのうちに、じぶんの体温のように。 「魂は」より一部抜粋 考察が流行ったり、一億総SNS時代みたいになってきており、「…
文藝に掲載された時に読んで単行本も買ったのに積んでいて、単行本読めずにいるうちに文庫が出て買って1年積んでいた、彩瀬まる『森があふれる』をやっと読んだ。 だから6年ぶりに読んだんだけど、「こんなすごい小説だったのか」と震えた。6年前の時は彩瀬…
あの街は、もうこの世に存在しない。今故郷にある街は、以前住んでいたところではない。ある意味で私は故郷喪失者のようなものである。 私が育った家はもうない。その周りにあった文房具店や和菓子屋や手芸屋靴屋も、もうない。全部再開発で壊されて大きな市…
「近づきすぎると、限度をわきまえないって言われそうで。押しつけがましいとか、情緒的だとか……。でも、後ろに下がっていれば、無関心なやつだと思われるだろうし。とにかく、僕、ほかのみんなが知ってるルールを習いそこねたんじゃないかって気がするんだ…
キム・ホヨン『不便なコンビニ』を読んだ。書店で見かけて存在は知っていたものの、なぜか読む気にはなれずにいたものだったけど、それがファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』が本屋大賞翻訳部門1位を受賞した時の3位と知って、これは読まねばなる…
そう、書店は僕にとって、可能性の天国なのである。だから逆に何も買いたくなくなることさえある。何か買ってしまえば可能性が現実にせばまってしまい、書店内に立っていた時の圧倒的な喜びが消えるからだ。 となると、子供の頃に買った本を読むすぐさま読破…
君との関係はどうしてここまで続いてきたのだろう。完全に連絡が途絶え、それこそ見知らぬ他人のように、お互いの人生から完全に消えてしまうチャンスも何度かあったはずなのに。相手への穏やかな記憶だけを分かち合う選択もできたはずなのに。私はどうして…
今回も一帖ずつ書いていくよー。重量級になったけど、これでも抑えたつもりだよー。 末摘花 源氏物語は古典的名作であるが故、もうネタバレとかそういう概念はないんだけど、「末摘花」の帖はネタバレなしで読みたかった…。 源氏物語を読むこと三回目にして…