本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

本読みの芋づる、はじめます。

こんにちは。

本が大好きな読書人間、紗綾(さや)です。

みなさんは村田沙耶香さんの芥川賞受賞作『コンビニ人間』はお読みになりましたか?

受賞時に話題となり、最近中村文則さん解説で文庫になりましたね。

あれを読んで思ったのです、私は読書人間だと。

コンビニ人間』の主人公古倉恵子は生活の中心がコンビニで、そこで働くためコンビニの一部になるため、そのために健康管理もしっかりするという、まさにコンビニ人間

だったら睡眠時間を減らせばもっと本が読めるかもしれないと睡眠改善を意識したり、健康になればもっと本が読めるようになるかもしれないと青汁飲んだりしてる私は読書人間ではないか!と気付かされました。

その日以来よりよい読書人間になるべく、本と向き合う日々です。

 

このブログを始めるにあたって、そんな読書人間を形成する上で大きなキーパーソンになった作家さんやその作品について話していきたいと思います。

 

目次

 

西加奈子さん

小学生の頃から本は好きでした。
でも好きな作家さんとしてあげる人はその時々で違って、その時好きな作家さんでしかありませんでした。
でも西加奈子さんは違う。出会ってから今日まで、ずーーーと好きなまま。
 
西さんの作品には2タイプあると思っていて、ひとつは登場人物が個性的で、実際に自分の側にいたらどう対処していいのかわからない人達でも、西さんの手にかかれば愛おしく思えてくる作品(『きりこについて』や『漁港の肉子ちゃん』など)と、
もうひとつは他者の視線や自己認識に自分が縛られて身動きが取れなくなってしまった人達を書く作品(『舞台』や直木賞受賞作の『サラバ!』など)があると思います。
もちろん、全ての作品がわけられるわけではないですが。
 
私はどちらかというと後者の作品が好きで、特に『うつくしい人』は何度も読み返しています。
 
どうしてだか自分が惨めに思える時期が不意にやって来る。
なにを見ても自分の方が劣っているような惨めな気持ちになる時がなぜか定期的に襲ってくる。
 
そういう時には『うつくしい人』を読みたくなります。
最近では読まなくてもこの作品を思い浮かべるだけで、力がもらえるようになりました。
 
西さん作品の前者のタイプには、いつのまにか偏見といっていいものを持ってしまった自分に気付かされ、人をまっすぐに見ること簡単にジャッジせずにその人自身を見ることを教わりました。
 
実はそれは後者の作品にもいえることで、そうした他者へのまなざしを自分にも向けること、自分とまっすぐに向き合うこと、人の目を気にする自分さえも、自分を偽ってしまうことさえも受け入れ、肯定する勇気をもらいました。
 
西さんの作品を読むと全ての人間が愛おしく思えてきます。自分さえも。
 
私は西さんの作品に、自分も他者も含めた人間との付き合い方、人間の許し方を教わりました。
 

 

彩瀬まるさん

彩瀬さんも私の読書遍歴を話すには欠かせない大切な作家さんです。
 
本を読んでも、映画を見ても、泣いたことなんてないわたしが、初めて本を読んで号泣するという体験をしたのが、彩瀬まるさんのデビュー小説『あのひとは蜘蛛を潰せない』でした。

『あのひとは蜘蛛を潰せない』
はいわゆる「泣ける小説」ではありません。
悲恋があるわけでもないし、不治の病があるわけでもない。
だから万人が泣けるような小説ではない。
 
でも、ぼろぼろに泣きました。こんなことがあっていいのか、ってくらい。
小説で、文字で、紙のインクだけでこんなに感情が揺さぶられて泣けるなんてことがあるのかってくらいに。

それは小説の中の言葉が、わたしがそれまで抱えていたなんとなく辛い気持ち、なんとなく苦しい気持ちに言葉で輪郭をなぞってくれて、形を与えてくれたからです。

自分でも何がこんなに辛いのか苦しいのかわからない。
だけどどうしようもなく苦しい。

そんな気持ちに輪郭が与えられ、形が与えられると、名前がつけられる。
置き場所がわかる。
そうして、その気持ちを持ったままでもどうにか生きていける。

それは言葉によってもたらされた昇華でした。
それ以来、彩瀬さんはわたしにとって特別な作家さんになりました。
 

 

瀧井朝世さん

翻訳家の小竹由美子さんがあるアメリカ人作家(確かゼイディー・スミスだったような…)のことを、「あの人は作家としても一流だし、読書人としても一流だ」と言っていて、それを聞いた時から私は「作家は無理でも、本を読むからにはせめて一流の読書人になりたい!」と本を読む人間として目標のようなものができました。

 

けれどしばらくは、一流の読書人ってどうやったらなれるのかどんな人のことを一流の読書人になれるのか、具体的なことがわからないまま、とにかく一流になりたい!と思うだけ。

そんな時に出会ったのが瀧井朝世さんです。

 

瀧井さんはライターさんで、数々の雑誌やメディアで作家インタビューや書評を担当されている方です。

連載をたくさんお持ちなのですが、私が特に楽しみにしているのは、新潮社から毎月出ている無料の小冊子「波」で連載されている「サイン、コサイン、偏愛レビュー」です。

この連載は毎月新刊を取り上げて、それに関連するもの、それを連想させる他の作品を2作品取り上げて、計3作品が紹介されているのものです。

取り上げられている作品のジャンルは、エンタメ純文学、海外日本、古典、ノンフィクションなど、幅広く、そしてタイトルに「偏愛」とある通り、瀧井さんの思い入れ愛情がたっぷりです。

偏愛本といっても、その偏愛の分野が多岐にわたっているのです。

つまり色んな方角に愛がある幅広い偏愛。

そんなことが可能だなんて、色んな分野に幅広いジャンルに偏愛があるなんて、なんて素敵なんだろう。

瀧井さんこそ一流の読書人なのではないか、私もそんな読書人になりたい!と、今やもう憧れの人です。

 

この「サイン、コサイン、偏愛レビュー」から厳選された56本を収録したものが『偏愛読書トライアングル』という書籍になっています。
紹介されている作品は160冊を越え、連載時にはなかった脚注もこれまた面白いという、本好きならばどこを読んでもわくわくしてしまう書評本だと思います。

 

瀧井さんの書評は読めば読むほど、その読書の幅の広さ深さ、本への愛情を感じます。

本の世界読書の世界の幅を広げてくてる、もう一段深いところまで連れていってくれる、瀧井さんの書評。

ぜひ一度読んで見てください。

 

 

以上、私の読書生活には欠かせないお三方についてお話しさせていただきました。

まだまだ好きな作品好きな作家さんがいます。

これから沢山話して行きたいと思うのでよろしくお願いします!