本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

読書におけるツッコミ力

岸本佐知子さんと西加奈子さんのミランダ・ジュライ『最初の悪い男』発売記念トークイベントで思った。
本を読むのにもツッコミ力が必要だ、と。

お2人は「こういうことあるよねー!」とか、「このキャラクターのここがおかしい」とか前のめりでツッコミながら本を読んでいるようで、その読み方ができたらもっと本を楽しめるだろうし、本と距離も縮まるだろうな、となんだか羨ましくなった。

それまで気づかなかったけど、私の読書スタイルはどうやら傍聴スタイルだったようだ。
作者が語るままに任せて、作者の意図通りに流されていく。決して「異議あり!」と言わない。
それでもずっと本を楽しく読んできたけれど、ツッコミスタイルを知ってからなんだか今までの読み方が損をしていたような、もったいないものであったような気がしてくる。

的確なツッコミがあれば笑いが起きるように、的確なツッコミがあれば本をもっと面白くなるはずだ。
ぜひツッコミ読書力を身につけたい…!

 


久保寺健彦『青少年のための小説入門』は登場人物たちのツッコミ読書力を堪能できる小説だった。

同級生に脅され万引きをした中学二年生の一真は、強面の男登に見つかり、見逃しの交換条件として毎日家に来て小説を朗読するように言われる。
登は文字が文字として読めない障害、ディスレクシアを持ちつつも小説家デビューを目指しているのだった。

2人は一真の朗読という形で共に小説を読み、小説とはどういうものなのか、面白い小説とは何かを考えていくのだけれど、2人で小説を読むシーンがとにかく面白い。
書き手に惑わされながら小説に没頭しながらも、キャラクターの魅力を語ったり、小説の構造を分析してその巧みさに驚いたり。

今まで読んで来た小説を換骨奪胎して登がプロットを考え、それを基に一真が小説にしたものを分析する場面もいい。
プロットは面白いんだけど、いざ小説にしてみると面白くない。

これはなぜだろうと2人が検証するシーンは、小説家たちの策略や見せ方読ませ方に目が開くようだし、これから小説を読む時にもそこに注目せずにはいられなくなる。

この小説は小説を書く人のための小説入門でもあるし、小説を読むための小説入門でもある。
もちろん実在の小説が沢山魅力的に挿入されているのでブックガイドとしても。

あぁどうやったら読書におけるツッコミ力がつくのだろう。

 

 

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)