本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

無修正の言葉で。

小林聡美さんがゲスト2人を招いてひとつのテーマにとって話をする、『ていだん』という本を読みました。

 2人の会話は対談、3人の会話は鼎談というのだけど、対談本も鼎談本も読むのは久しぶり。でも毎回読むたびにもっと対談本も読まなきゃな、と思います。

 

対談本鼎談本のいいところは実際のその人近い言葉が聞けるところ。

小説は虚構のヴェールを被ってるし、エッセイはたくさん推敲してそうな気もするし、推敲してなくてもその人の内面に近すぎて実際にその人と会っている感じでは見られないところまで見えちゃう。

だからやっぱり対談本ってその人に会っている感じがする。

だからやっぱり対談本って楽しい。

 

目次

 

 

ていだん

 

小林さんが2人のゲストを交えて、猫について発酵食品について海について役者についてと様々な話をしていきます。

小林さんはゲストを招く立場だってこともあるけど、自分のことを受け身だと言っているようにあまり自ら喋ることもなく、ゲストの話を聞いていく。

でも受け身と言ってもゲストによって対応が変わることはなく、小林さんは小林さんのまま喋っていて、テーマによってそれぞれ思い出とか日常が引き出されていって徐々に小林さんの人物像が浮かび上がっていくのも楽しいし、ゲストの方が「小林さんってこういう人だよね」っていうのを聞いて、そうなんだーって思うのも楽しい。

 

そうして少しづつ小林さんのことを知っていく感じが現実に人が人のことを知っていく感じと似ていて、やっぱり人って会話でお互いを知っていくし、会話って大事だなぁと思いました。

でも会話って思っていないことを喋ってしまったり、言葉に詰まってしまって思うように喋れなかったり、定型文のようなつまらない返しをしてしまったりする。

だから対談本鼎談本を読むともっと実りある会話したいなぁ、もっと対談本読んで学ぼうと思うのです。

 

 

ていだん (単行本)

ていだん (単行本)

 

 

 

ご本、出しときますね?

 

対談本は割とたくさん読んでるけど、鼎談本はあまり読んでないなぁと思ったけどありました。すごい面白い鼎談本読んだことが。

本好きの方に是非読んで欲しい鼎談本は『ご本、出しときますね?』です。

この鼎談本はBSジャパンにて放送されていた若林正恭さんがMCで毎週作家さん2人をゲストに招いてトークする同タイトルの番組をまとめたものです。

 

エッセイで作家さんのことを知る機会はあっても、作家さんが話しているのを見る機会ってなかなかないですよね。

それがこの番組では、作家さんの私生活や普段考えていること、小説を書く時に考えていることを直接聞ける。声とか仕草とか表情も含めて見えるのが楽しいし、作家さん同士の仲の良さも伺えて微笑ましくて、毎週楽しみにしていました。

またやって欲しい。再放送でもいいから放送して欲しい。

 

でもこうして本にまとめてもらえるだけでもありがたいし、エッセイだけでは伝わってこない作家さんたちの様子が生き生きと書かれているので是非読んで欲しいです。

ちなみに私が好きな回は朝井リョウさんが出ている回と西加奈子さんが出ている回。それと加藤千恵さん村田沙耶香さんの回です。

 

 

 

 

ダイオウイカは知らないでしょう

 

この本は鼎談と言っても上の2冊とはちょっと毛色が違うもの。

西加奈子さんとせきしろさんがゲスト1人を招いて一つのテーマを元に3人で短歌を作る連載をまとめたものです。

 

短歌は字数も決まっているし無修正でいるのは難しいですが、短歌を作ってきてこの短歌はこういうエピソードがあるんですっていう短歌の謎解きのようなものがおもしろい。

短歌というフィルターを通して見えてくるその人と、それが短歌になる前の無加工のエピソードが両方楽しめるのが贅沢です。

歌集では短歌だけ書かれているので読むこちらが想像するしかないんですが、この本では自分が想像したものと、その短歌の背景が答え合わせのように照らし合わせることができて楽しいですし、背景を知ることでこの人は「ここでそういう言葉をチョイスするのか」と思えてその人独自の言語センスをより楽しめると思います。

 

 

 

 

おわりに

 

会話って噛み合ってるだけじゃなくて、噛み合ってるんだけどどんどん発展していくような、新しい感覚が得られるものが楽しい。

飾らないその人独自の言葉を聞きたい。私も借り物の言葉ではなく自分に一番しっくりくる言葉で会話したい。

対談本や鼎談本をもっとたくさん読んでたくさんの言葉に触れたら、自分の言葉を発掘できるかも。そうしたらもっと楽しく会話ができるようになるかも。

ぜひそうなりたい。