読書日記 「おさん」
今年の目標の1つ、新潮文庫の太宰治作品読破がまったくすすんでいません…。
なんでだろ。月に2冊は読むはずなのに。
でも太宰治は意外と読むやすくて、読み始めたらするする読めてしまうのがいいところ。
昨日は短編集『ヴィヨンの妻』の「おさん」のところまで読みました。
夫の革命
この「おさん」にも太宰作品ではおなじみ、浮気する夫がでてくるのですが、この夫がフランス革命の話をするシーンがあります。
「新しい秩序のために破壊しなければいけないんだ、破壊したからといって新秩序が再建できるわけじゃないんだけどね、でも革命を起こさなきゃいけないんだ、革命っていうのはかなしくて美しいんだよ」みたいなことを子供に泣きながら話すんです。
しかし妻からすれば、夫の話す革命とはイコール浮気。
革命のつらさを語っているようで、平和な家庭を壊さなければいけないつらさを話し、浮気の言い訳をしているにすぎません。しかも泣きながら。この夫、だいぶ自分に酔っている。
そんな最低な浮気夫に対して妻が起こした革命が痛快です。
妻の革命
毎日毎日暑い日が続いて食も細くなり赤ん坊におっぱいもあげられない日々、そのうえ浮気をする夫は相変わらずぐちぐち言ってくる。
そんなある日妻は、
そうなんだ、夫の気持を楽にしてあげたら、私の気持ちも楽になるんだ。道徳も何もありゃしない、気持ちが楽にならば、それでいいんだ
と、ある種の開き直りの境地に至ります。
そこからの2人の関係は打って変わってウキウキ甘々なものに変わっていきます。
これからは、何でもこの調子で、軽く夫に甘えて、冗談を言い、ごまかしだって何だってかまわない、正しい態度でなくったってかまわない、そんな、道徳なんてどうだっていい、ただ少しでも、しばらくでも気持の楽な生き方をしたい
この妻の開き直り切り替えはまさに革命。
妻の革命と引き寄せの法則とアイドル
「今この瞬間を楽しもう革命」を起こした妻は最後にこんな信条を得ます。
革命は、ひとが楽に生きるために行うものです。悲壮な顔の革命家を私は信用いたしません。
(中略)
気の持ち方を、軽くくるりと変えるのが真の革命で、それさえ出来たら、何のむずかしい問題もないはずです。
「おさん」の最後の方にあるこの一節を読んで、自己啓発本で読んだことあるやつだ!太宰治の作品でこんな文に出会うとは!とちょっと感動しました。
「夢や目標に向かうまでも楽しんでー、その道の過程を楽しむからこそ早く目標に届くのです!」というような文章を思い出したのです。
太宰治の作品も何冊か読んできたので最初の暗ーいイメージも和らぎ始めてコミカルな作品も多いんだなぁと気づくことも多いのですが、まだまだ鬱展開ばかりというイメージが払拭されてないので、引き寄せの法則の本に書かれているキラキラした文章がでてきて、また新たな太宰治像に出会えた!と嬉しくなりました。
読了後にはももクロ初期の曲「D’の純情」の「好きなことはくるしくたって努力と感じないよ」という歌詞を思い出す始末。
この歌詞を思い出した後だと、妻はそんなどうしようもない浮気夫のことそれでも好きだったんだなーと思えてきました。
しかしまさか太宰治の作品の中で自己啓発本のキラキラとアイドルのキラキラと出会えるとは。
ますます太宰治の作品を読み進めるのが楽しみになりました。