本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

読書日記「技師の親指」

「やれやれ」と、水力技師はロンドンに戻る列車の座席に座ると、もの憂い顔で言った。「たいした仕事でしたよ!親指はなくすし。五十ギニーの報酬はもらえない。いったい何を得たと言えるでしょう?」

「経験ですよ」と、ホームズは笑いながら言った。「経験というのは、目に見えないが、価値あるものですよ。それを言葉にしさえすれば、今後一生の間、すばらしい話し相手だという評判を得ることができるのですから」

 

引き続きホームズ物を読んでいます。

今日読んだのは河出文庫の『シャーロック・ホームズ全集③シャーロック・ホームズの冒険』。

引用したのは「技師の親指」という短編の一節です。

 

さすがホームズさん。「経験が大事」というだけでなく、「経験を言葉にすることが大事」というあたりが好き。

やっぱり言葉にしないとだめですよね。

だめってことはないんだろうけど、言葉にした方がやっぱり身につくし武器になる。

道具、ものさしになる。

 

誰かが自分の経験を話した時に、「わかるー。私もそういうことがあってさー」って自分の経験を話しだせると楽しいし。お互いの理解が深るし。

「わかるー」って言うだけより、薄っぺらくないし。

「わかるー」「そうなんだー」っていう言葉は誰でもいえる。そうじゃなくてもっと自分なりの経験や感情がのった話をできたら、そんな話が聞けたら、楽しい。

 

ホームズの言うように自分の経験を言葉にできる人は、確かに「すばらしい話し相手だという評判を得ることができる」だろう。

 

意外と自分の身に起きたこと、自分が経験したことって、ちゃんと言葉にできてない。

ちゃんと言葉にできてないと、自分の身になっていないし、ちゃんと「経験した」ともいえないような気がしている。

やっぱりアウトプットって大事。

すばらしい話し相手と話したいし、すばらしい話し相手になりたいものです。