本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

『断片的なものの社会学』 岸政彦

エミール・デュルケムは、私たちが「神」だと思っているものは、実は「社会」である、と言った。
祈りが届くかどうかは、「社会」が決める。
災厄をもたらす悪しき神もいる。それと同じように社会自体が、自分自身の破滅にむかって突き進むこともある。神も社会も、間違いを犯すことがある。
私たちは、私たちの言葉や、私たちが思っている正しさや良いもの、美しいものが、どうか誰かに届きますようにと祈る。社会がそれを聞き届けてくれるかどうかはわからない。しかし私たちは、社会にむけて言葉を発し続けるしかない。それしかできることがない。
あるいは、少なくともそれだけはできる。

 

ちょっと前までは「政治が悪い」「社会が悪い」って言葉がぴんと来なかった。
ほんとにそうなの?自分の努力でもうちょっとどうにかならないものなの?とどこかで思っていたと思う。
そのもっと前は「どの党が政権を握っても誰が総理大臣になっても何も変わらない」とさえ思っていた。
ただただ無知なだけだった。


今では「政治が悪い」も「社会が悪い」もなんとなくわかるようになってきた。まだまだ無知だから、具体的にどこがどう悪くて改善するにはどうしたらいいのか自分の意見は持てないけれど、先に引用した箇所の言っていることもわかる。
「あの子が安心して眠れていますように」も、「この子が健やかに育ちますように」も、神様へ向けた祈りなんかじゃなくて、社会へ向けた祈りだ。

ずーっと気になっていた本だったけど、今読めてよかった。話題になっていた当時に読んでいたらきっと、この言葉の意味は、本当にはわからなかった。

 

 

 

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学