本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

『下流志向』 内田樹

「不快」のカードを家庭内でいちばんたくさん切れるメンバーが、家庭内におけるリソースの配分や、決定に際しての発言権において優位に立つことができる。ですから、一家全員が「この家庭のメンバーであることから最大の不快、最大の不利益をこうむっているのは誰か?」をめぐる覇権争奪戦に熱中することになります。

 

 

 


自分の中にも、身の回りにも。
いるいる。こんな私、こんな人。

知らないわからないものの存在は無視。眼中にない。
不快アピールがなんだか偉そう。いつの間にやら不快アピールが優位アピールに。

ぐさっときたり。すっきりしたり。

他にも、自己責任論ばかりだと、自分の手に負える範囲、自分でリスクを負える範囲でしか行動しない人だけになって社会が成り立たなくなるよね。
とか。
自立と孤立は違うよね。集団の中で自分を振り返り、なすべきことを自分の判断でできる人が自立よね。
とか。
そもそも労働という性質の中にオーバーアチーブって含まれてるよね。
とか。
なんのためにこれを学ぶのか、学び始めたばかりの人やその最中の人に明確にわかるはずがないよね。
とか。
目から鱗がポロポロするくらい矛盾点を突いてくる。

 


古い本ではあるけれど、自分の頭で考える手助けになるような本だった。

今までなんとなくそういうもんなんだ、そういう問題があるんだと思ってただけのことに、何が原因なのか、どんな流れの末にこんな現象が起きたのか説明されると、世の中が深淵さを感じて面白くも恐くもなる。
でもこういう本ももっと読んでいきたい。