本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

第167回芥川賞受賞発表後日談。

第167回芥川賞受賞作が発表されました。

もう7年くらい芥川賞候補作を読み続けてきたけど、ちゃんと予想立てたことなかったなということで昨日受賞予想ブログを書きましたが、せっかくなので発表後の答え合わせや新芥川賞作家さんのことやあれやこれや、受賞後の雑感を書いていきます。

 

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答えあわせ

 

まず昨日私が立てた予想は、

本命 山下紘加 「あくてえ」

対抗 高瀬隼子 「おいしいごはんが食べられますように」

穴  小砂川チト「家庭用安心坑夫」

でしたが、受賞したのは対抗の高瀬隼子さん「おいしいごはんが食べられますように」でした!!

本命ではなかったけど、一応予想の中で作品名を挙げていたものが受賞して嬉しい。

私の中では「あくてえ」の方が打ちのめされたし、衝撃が大きかったので本命にしたのですが、「おいしいごはんが食べられますように」も好きだったので嬉しいです。

 

「おいしいごはんが食べられますように」の感想はこちら。

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芥川賞作家 高瀬隼子

 

というかそもそも高瀬隼子さんが好きなんですよね。

高瀬さんは「犬のかたちをしているもの」という作品でデビューされているのですが、それを私が信頼しているライターの瀧井朝世さんが要注目と紹介していたので、読まなくては!と飛びついたのです。

「高瀬隼子さんならデビュー作から読んでたもんね!」と大きい顔できるのも瀧井朝世さんのお陰。

 

 

「犬のかたちをしているもの」

 

そのデビュー作の感想がこちら。

 

すばる文学賞受賞作の高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』を読んだ。

 

すばる文学賞受賞作って好きな作品が多くて今回も期待してたのだけどやっぱりよかった。
この良さがなんなのかよくわからなかったけど、今月号のすばるで瀧井朝世さんの書評に「敏感さと繊細さを持ち合わせ、確かな言葉選びで、今の時代の心の揺れを描きだせる作家がまた一人増えた」とあって、それがすごく腑に落ちた。

すばる文学賞ってまさにそんな作家さんを生む賞だって印象がある。

 

あと家族と仲良いからこそ、自分の行動原理が家族を喜ばせたいとかそういう自分本位じゃなくなっちゃって、悩みが増えるっていうのも解説してもらわなきゃ流してしまってたな。
物語の中のことを全部当たり前に読んじゃう癖が抜けない…。

 

これを読んで思い出したんですが、高瀬さんはすばる出身の作家さんだったんですね。『おいしいごはんが食べられますように』が群像掲載作品なんだけど、出身でいうとすばる文学賞

そう考えると最近すばる掲載作品で芥川賞受賞作ってないかも…。

 

予想ブログでも触れた昔の芥川賞候補作木崎みつ子さん「コンジュジ」もすばる文学賞受賞作品だし、石田夏穂さん「我が友、スミス」はすばる文学賞の受賞は逃したものの佳作に選ばれてデビューして、その後芥川賞候補作に選ばれているし、私の好きな作家さん奥田亜希子さんもこの文学賞出身なんです。

あと、春見朔子さんの「そういう生き物」という受賞作もすごい好きだったな。この作品以来見かけないけれど、どうしたのでしょうか…。

 

すばる文学賞すごい。これからもチェックしなくては。

 

 

 

 

 

「水たまりで息をする」

 

2作目の「水たまりで息をする」は芥川賞候補入りしたことをきっかけに読みました。この作品も好きだったな。

当時の感想がこちら。

 

夫が風呂に入らなくなった。

そりゃ入って欲しいし入らないと臭いし臭いと周りからの目も気になる。

でもそれはこちらが正しいと思う領域に引っ張りこもうとすることで相手の領域にずかずかと足を踏み入れることでもあって。

 

ずっと二人で暮らしてきて、これからもこの感じで過ぎていくのだろうと思う毎日に細やかな亀裂が入って、ほとんど自分だった人が自分とは違う匂いを放ち始めて、この人は他人でままならない存在なのだと気付く。

 

自分とは違う人と生きていくことはどちらかがどちらかの人生に巻き込まれて生きていくことでもある。

 

弱い人は強い人の重荷になって生きていくしかないのか。弱い人と共に生きる人は強くならないといけないのか。二人とも弱いままで誰にもなんにも言われずに生きていくことはできないのか。

誰かの重荷になることを拒否して一人で弱いまま生きていくことを選ぶのは愛情の拒絶なのか。

 

この作品は第165回芥川賞候補作なので、前の前、ちょうど一年前に候補入りした作品ですね。

この時の受賞作品は石沢麻衣さん「貝に続く場所にて」と、李琴峰さん「彼岸花が咲く島」でした。

どっちも私には難しかったり、ぴんと来なかった記憶がある…。

だからこの回は「水たまりで息をする」が受賞すると予想したんじゃないかなぁ。

 

こちらの作品も昨日のブログで書いた高瀬さんの不穏さ、普通のふりをしてる、善人のふりをしてる、そうしたこちら側の猫かぶりを剥がしにかかってくる不穏さ、居心地の悪さが存分に味わえる作品なので、ぜひこちらも読んで欲しいです!

 

未刊行作品「いいこのあくび」

 

「おいしいごはんが食べられますように」が受賞した後「高瀬作品は全部読んでるもんね!」と大きな顔をしていましたが、数分後に倉本さおりさんのこのツイートにより、勘違いだったことを知り恥じ入りました。

 

 

この作品もすごい面白そうじゃないですか??!

未刊行作品ですが、調べたらすばるに掲載されていることがわかったので早速図書館で予約しました。

これで高瀬作品コンプリートできるっ。

楽しみだなぁ。しかし高瀬さんタイトルつけるのがとてもお上手ですね。

どのタイトルもふんわりと意味深。

 

直木賞

 

直木賞はいつもノータッチなんですけど、今回は豊崎由美さんや三宅香帆さんありまよさんが候補作だった深緑野分さんの『スタッフロール』を激推しして他ので思わず購入してしまいました。

深緑さんも好きなんですよ…。過去のブログでめちゃくちゃ語ってるし…。

『スタッフロール』も発売当時読もうかなと思ってたんですけど、積ん読に『この本を盗む者は』があったのでそれ読んでからにしようとスルーしてしまったのです。

でも買ったから!読むぞ!

 

 

 

 



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↑『スタッフロール』が候補入りしたぐらいからこの記事のアクセス数がなぜか増えたんですよね。

深緑さんへの注目が高まったのかな。

面白いのいっぱいあるから読んで欲しいな。

そして深緑さん、いつか直木賞受賞して欲しい。

 

 

おわりに

 

今回初めてまともに予想を立てて、あれこれ書いて見ましたが楽しかったです。

選評を読むまでがこのイベントなのでそれもしっかり読もう。

穴にした小砂川チトさんの「家庭用安心坑夫」は審査員の平野啓一郎さん的には推しだったようだし、そこらへんの評価も詳しく読みたい。

もちろん本命だった山下紘加さんの「あくてえ」の審査員評も詳しく知りたい。

審査員好みをしっかり把握し受賞作予想的中できるようになりたい。

そしていつかいつか、候補作までも予想できるようになりたい。

文芸誌の新人賞はたまにチェックするので、これからはもっとしっかりチェックして、この新人さんは芥川賞候補入りするんじゃない??とか言ってみたい。

夢はでっかく。立派な芥川賞オタクになろう。