前回は『うつくしい人』の感想を書きましたが、今回は『美しい星』です(たまたま)
自分たちは地球に生まれ地球人として生きてきたけど、実は宇宙人なんだと気付いた一家の元へ、同じく自分たちは宇宙人だと気付いた助教授と床屋と銀行員の男3人が訪ねてきて論争を交わす。人間は愚かだから救わねばならないという宇宙人(一家の父)と、人間は愚かだから滅亡させなければならないという宇宙人(男3人)。だけど、そういう宇宙人たちもなかなかに愚かで醜い。
でもそんな人間にしたって宇宙人にしたって、じわじわと愛らしくみえてくる。
人間って愚かで弱っちくて器がちっちゃくて身勝手で視野が狭くって怠惰で同じことばっかり繰り返してる。
人間のいいところがあんまり書かれてない。ストレートに褒められてない。
だけど人間愛に満ちた胸が震えるラストだった。
作品と作者って単純に結びつけられないだろうけど、「三島由紀夫って人間好きだったんだ」という妙な感動を覚えた。
ナルシストってイメージが強かったけど、ナルシストも極めると人間という種族自体が好きになるもんなんだろうか。
虚無がいちいち道化た形姿を示すたびに、彼らは笑った。平原を走ってくる微風が、群れなす羊の毛をそば立てるのを見て、彼らは笑った。偉大な虚無のこんな些細な関心が可笑しいかったからだ。そして笑っているときだけ、彼らは虚無をないもののように感じ、いわば虚無から癒されたのだ。