そう、書店は僕にとって、可能性の天国なのである。だから逆に何も買いたくなくなることさえある。何か買ってしまえば可能性が現実にせばまってしまい、書店内に立っていた時の圧倒的な喜びが消えるからだ。
となると、子供の頃に買った本を読むすぐさま読破しようとした意味もわかってくる。僕は入手した本を一刻も早く読み終え、再び可能性を広げたかったのだ。書店に戻り、可能性の天国にまた立ちたかったのである。
箱根本箱で購入した『本なんて!作家と本をめぐる52話』を読んだ。5年ぐらい前に泊まったので、それ以来ずっと積読だったものをやっと。
この本は芥川龍之介から朝井リョウまで色んな時代の作家が書いた読書エッセイをまとめたアンソロジー。作家だけでなく漫画家も詩人も文学者もいる。
なかでも好きだったのがいとうせいこうさんの「可能性の天国への帰還」。
いとうさんは子供の頃から本好きで、本屋さんで絵本を買ってもったらすぐ読み始める、本屋さんの前の横断歩道に座り込んでまでも、というレベル。
本好きとはいえ、なぜそうも急いで読み始めるのかというと、というのが冒頭の引用部分だ。
本を読んでる時に別の本のことを考えていることがよくある。次に読む本のこととか。
本を読んでる時より、読む前の方がわくわくしている。面白そう!とかどんな本かな?とか。
本は読んでて楽しいものだけど、読む前のわくわくを上回る本ってなかなかない。
いや上回るとか上回るとかじゃなく、別種のものなのかもしれない。読んでる時のわくわくと読む前のわくわくは。
どっちも好きといえば好きなんだけど、やっぱり読む前のわくわくは格別で、次読む本のために今の本を読んでる感じはちょっとある。
だからまだ読み終わってない本、まだ読んでいない本が家にあるのに本屋さんに行くし、買ったところでいつ読むのかわからなくても本を買う。
このエッセイ集も積んで以来、5年ずっとわくわくさせてくれていた。読み終えた今、ちょっと寂しい。
