1.『小説』野﨑まど

思ってたのと違った。
あらすじとか人の感想を聞いて、『夏の庭』と『青少年のための小説入門』を掛け合わせたものを想像してたんだけど、幻想で怪奇でめっちゃ理系だった。
これが私の初野﨑まど作品だったんだけど、何冊か読んだ後だったらこの感じは予想できたのかな。なにぶんこれしか読んでないのでわからない。
「人はなぜ小説を読むのか」ということがテーマだってことは聞いてたけど、私には「小説を読むことに大した意味はない」という言説を宇宙や生物とは何かという理系要素を使った軌跡で何周もして書いてる、といった感じだった。
思ってたのとは違ったけど、それが面白かった。
2.『スプレー』キム・ギョンウク
韓国文学のショートショート作品。
他人に届いた荷物を間違って持って帰ってしまったことがきっかけで、人の荷物を勝手に持ち帰り開けるという行為に悦を感じ始め、そこから坂道を転がるように悪を重ねていく主人公。
初めて読んだ時は、読後がざらりとして嫌な気持ちになって、イヤミスみたいな作品だなと思ったけど、再読の今回はちょっとコメディみたいだなと思った。
人の荷物を勝手に開けることに悦を感じ始め、「こんな悪いことしてる俺」と、自分に酔ってる感じすらする、主人公の前に強大な悪が現れ、途端に主人公がただの小悪党にみえるシーンがあるのだ。
初めて読んだ時はその強大な悪に引いてしまって気づかなかったけど、その逆転現象というか、主人公の悪を遥に超えてくる悪、それによって主人公のなけなしの良心が引き出されるという構図が面白い。

開高健ノンフィクション賞受賞作。
JA対馬であった、不正不祥事を扱ったノンフィクションなんだけど、どんなホラーより怖いし嫌ぁな気持ちになる。
「JAにだけは就職したらいかん!」と子々孫々に伝える偏見おばあちゃんになりそうなレベル。
JAがやってる保険の契約数一位で何年の表彰されたJA職員がどんな不正をどういう手口でしてきたか、それがその人個人のものだけでなく、組織ぐるみで泥沼化していたかを書いていて、お互い逃げられないように縛りあって共に悪事の地獄に落ちてどんどん深みにハマっていく様が怖い。
保険って一回契約したらそれで終わりっぽいのに、なんでこの人はそんなに契約数稼げるんだ。一人につき一件しか契約できないんじゃないか。新規開拓にも限界あるだろ、と思ってたけど、そこはやはり不正で、その不正の手口がシステムの穴を巧妙につくもので、ずるい奴ってほんとにずるいし人の心がないよねとなった。
そう考えると『スプレー』の主人公なんてほんとにかわいいものだよ。比べるもんじゃないけどさ。
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