本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

25.『幽霊塔』

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あまり大きな声では言えないが、江戸川乱歩が好きである。独特の世界観を持っていて奇妙でおどろおどろしくて怖いもの見たさを満たしてくれる。いわゆる変態といわれるような作家なので、大きな声では言いにくいが。

同じような作家に谷崎潤一郎もいる。でもなんか乱歩の方が、ギミックの凝った変態というかエンタメ性のある変態で、谷崎のは真っ当な純文学的な変態というか。乱歩のはサーカスや見世物小屋で見るような一瞬の鮮やかさを持つ変態で、谷崎のは日常の先にいるはまったら帰れないぬるりとした変態というか。だから軽い気持ちで楽しめる変態の方がいいというか。なにを言っているのだ私は。

 

この『幽霊塔』という作品は知らなかったのだけど、宮崎駿の巻頭漫画に惹かれて読んでみた。もともとこの作品は黒岩涙香がウィリアムスンの『灰色の女』を翻案したもので、それを江戸川乱歩がリライトしたものだそう。

『涙香迷宮』という小説を読んで以来、黒岩涙香もずっと気になる存在だったので、そこにも惹かれた。彼は当時それが当たり前だったというのもあるだろうけど、海外の小説を翻訳の許可も得ずにばんばん日本風にアレンジして出していたらしい。

朝ドラの「花子とアン」の主人公のモデルになった村岡花子も『赤毛のアン』や色々な海外児童文学を訳しているけど、彼女もそんな感じだったんだろうか。いつ頃からちゃんと許可をとるようになったのかとか、そこらへんも気になる。

 

肝心の『幽霊塔』はどうだったかというと、期待していたよりも面白くはなかった…。

これもまぁ当時のことだから仕方ないのかもしれないけど、女性の書き方がひどい。

それは仕方ないと読み逃がそうとしたけれど、この小説は週間連載だったのかなんなのか、事件が全て解決した後の現在から過去を振り返る回顧の形で書かれており「まさかこの時こうなるとは思いもしなかった…」とか「あの時こうしていれば、こうはならなかったのに…」という匂わせフレーズが胸焼けするほど出てくる。少々うるさい。そういうフレーズで次週の話も読ませようとしているのかもしれないけど。

こういう続きが気になるような終わり方は今でもよくあるけど、語り手1人でこの引っ張り方をされるのは辛いなと気づいた。

 

例えば『ダ・ヴィンチ・コード』がそうだけど、語り手が複数いて「まさかこの時こうなるとは思いもしなかった…」と次の語り手にいってくれるなら、こんなに胸焼けはしなかっただろう。匂わせをしておいて、それを一旦忘れて次の語り手別角度から話を進めて、それでその語り手に戻った時に、そういうえばそんな匂わせがあったなと、改めて続きが気になるっていう具合が丁度いいのかもしれない。

 

あとこれも初めて気づいたんだけど、私はラブロマンスが絡むミステリがイマイチ信用できないようだ。容疑者が絶世の美女でその人に惚れた男が女の疑いを晴らすために奔走というのが、どうも探偵役として信用ならんというか。

読みながらどうしても「この男最後に痛い目にあってほしい」とか思ってしまう。乱歩がわざとそういう風に、痛い目を見る布石としてこの男をこんなふうに書いているのかも、と期待して読んだが全然そんなことはなかった。
そういえばオルハン・パムクの『雪』も男の行動原理が恋で信用できなかった。

いやもちろん話の中で男も女を疑い出すという流れはあるんだけど。女に惹かれている要因が「美女だから」というのも信用ならんポイントなのかも。

 

期待していたよりも面白くはなかったけどその分、私はどんな小説が好きなのか好きじゃないのか考えるきっかけになって面白かった。

こういうことがあるからこそ、読んでて「面白くないな、やめようかな」と思ったとしても、途中でやめることができないのだ。

むしろ面白かった本よりも、感想が長くなっているかもしれない。

 

幽霊塔 江戸川乱歩

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