某月某日
『百年文通』を読む。
不思議な机を通して大正時代の少女と文通をする話。
終盤に差し掛かってきたあたりで、虫が挟まっていてギョッとする。次読む人がギョッとしないように、あんまり触りたくないけど嫌だけどティッシュでとる。
この虫は前読んだ人からの何かのメッセージかと、小説の中身につられて思う。机を介してではなくこの本で、大正時代の少女ではなく現世のどこかの人と私は繋がっているのだな。
私の前にこの本を読んでいた人の時間と、私が今この本を読んでいる時間が繋がっているのだなぁと思う。
某月某日
『前進する日もしない日も』を読む。
益田ミリさんが30代後半から40才になった頃に書かれたエッセイで、あとがきには「どんな40代になるだろう?」とあるんだけど、私はミリさんがどんな40代を送ったのか知っている。
40代の終わりに書かれたエッセイの方を先に読んでいるからだ。
ミリさんが海外のいろんな国を旅したことも、お父さまとの死別があったことも知っている。
だからこのエッセイ自体には書いていないミリさんの40代を勝手に振り返って、まだ私自身は40代を過ごしてないのに「いろんなことがあった10年だったね」と泣きそうになってしまった。
10年の重みがどっと胸に押し寄せてきた。本で読んだだけの、他人の年月なのに。
某月某日
『フィフティ・ピープル』を読む。再読。
前に読んだ時より、それぞれの人物の繋がりや伏線に気付けて、連作短編みが増して物語がより深くなっていた。
連作短編や伏線、繋がりといっても大袈裟なものでも作為的なものでもなく、些細な細やかなもので、単に視点の切り替えだったりする。
この文章を書いてる私と、これを読んでいるあなたみたいな。それだけで連作短編になる。そんな感じの小説だった。
某月某日
『クリストファーの魔法の旅』を読む。
池澤春菜さんがラジオで話していて気になってたクレストマンシーシリーズがタイミングが良く文庫化。これは読み時なのでは?と読み始めました。これから毎月5月まで刊行されるらしい。
最初に発売された当初の刊行順でいうと、『クリストファーの魔法の旅』は最初の1冊ではないらしく、最初の刊行順に読みたい派の私には少々もどかしく残念。だけど、これから毎月買うのが楽しみ。こういう毎月漫画雑誌を楽しみにするみたいな感じが懐かしい。
どんな話だったかというと、父親の顔も碌に知らないし、家庭教師も次々変わるし母親はあんまりよろしくない抑圧的な存在で、そんな大人しかいない閉鎖的な環境にいたのに、ある特別な力があることに叔父が気付いたことによって、広い世界に出ていき、世界や周囲の大人、自分も含めた人間への解像度が上がっていき、最後には世界の中での自分の役割に目覚め、責務を全うするという熱い成長譚だった。
読み終えた後で、最初の方のクリストファーのことを思い返すと余計に幼く未熟にみえて「成長したねぇ」と親戚のおばさんのような気持ちになる。しかし魔法使いとしてはまだまだ未熟なので、これから更にどんな成長を見せるのか楽しみだ。
某月某日
『諸字百物語』を読む。
文フリで買った本なので一般流通はしてないのかもしれない。
前回の文フリでこの人の短編集を買って、まだそれを読んでないのに今回の文フリでも別の作品を買ってしまった。
まだ立ち読み程度にしか読んでない人の小説を次々と買ってしまうという引力。
この『諸字百物語』はちょっと不気味で怖いお話がたくさんの中に、切なく甘いお話が混ざっていてニクい。
不気味で怖い話は『世界でいちばん弱い幽霊』の中にもあった話のような読み心地だ。
短くて不気味で怖い話が好きなのかもしれない。

某月某日
『僕には鳥の言葉がわかる』を読む。
研究者の人がどんな実験を繰り返して発見に至るのかという話が面白かった。
鳥にも言葉があったんだ!あの鳴き声は会話だったんだ!という発見は楽しい。
色んな仕事があるんだなーという感じ、それまで知らなかった仕事をする人の生態を知るのは私の「いまここ」から遠く離れた感じがして頭が自由になる。
小説とかフィクションは意外とそういう効果がない。私の「いまここ」と比べてしまったり、感情を引き出されるから「いまここ」と繋がってしまう。自由度は低い。
気にも留めてなかったありふれたものにちゃんとした意味があったことに気付く全てのことに意味やらうんちくやらがあるのは息苦しさもある。
世界が新しくなったようで楽しいけど、新しくなる前の世界には戻れない。
鳥の鳴き声を意味を持たない音として、旋律だけで受け止めていた頃には戻れない。
これはこれである意味で自由度が低くなる。


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