本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

アジア文学への誘い@チェッコリ 第1回『歩道橋の魔術師』

呉明益『歩道橋の魔術師』を読み終えました。3度目の読了。

やっぱり何度読んでも良い。

海外文学の作品を何度も読みかえすことは少ない。

日本の作品は読みかえすものもたくさんあるけれど、海外のそれは今思い浮かんだものだとポール・オースターの『ムーン・パレス』やジョン・アーヴィングの『ホテルニューハンプシャー』ぐらい。

どこが面白いのか、自分がどこに惹かれているのかわからないから読み返してしまうのかもしれない。

 

しかし今回ばかりはどこに惹かれているのかわからないと困る。

なぜなら『歩道橋の魔術師』のイベントに参加するから。

 

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1979年、台北。物売りが立つ歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた――。今はなき「中華商場」と人々のささやかなエピソードを紡ぐ、ノスタルジックな連作短篇集。

 

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)

 

 

 

神保町にある韓国書籍専門のブックカフェCHEKCCORI(チェッコリ)で開かれた「アジア文学への誘い 第1回『歩道橋の魔術師』」に行ってきました。

モデレーターの倉本さおりさん長瀬海さんのお二人と参加者を交えて『歩道橋の魔術師』について話すというイベント。

 

 

 ↓「アジア文学への誘い」の詳しい情報はこちら。

www.chekccori.tokyo

 

 

ゆるーい読書会のような感じだったので、発言してもしなくても良いような雰囲気があり、好きなんだけども何も感想が言えない状態だった私は後ろの方でひっそり…。

発言ができなくてイベントに貢献できなかったのはちょっと申し訳ないですが、モデレーターのお二人や参加者の方の感想をたくさん聞けて大満足でした。

 

『歩道橋の魔術師』は私にとって好きなんだけどうまく感想が持てなくて自分がこの作品のどこが好きなのか知りたかった作品。

 このイベントのおかげでその謎がちょっと溶けたような心地に。

 

イベントの中で好きな短編を3つ聞かれて、それまでどの短編が好きなのか考えたことはなかったけど、その場で直感で選んだ3つがどれも「そこにあるんだけど見えない」ものや人が出てくるものだと気づきました。

透明人間のようになってしまった人だったり、着ぐるみの中に入っている人だったり、透明な金魚だったり。
自分がそれを選んだことになんだか妙に納得。

失ったもの、失いつつあるもの、かつては確かにここに存在していたけれど今はその存在が薄れつつあるもの。

そうしたものへのノスタルジーがこの小説には確かに存在していて、だから私はこの小説に惹かれているのかもしれません。

 

 

 

他にも色々な角度からこの作品について話されていたので、何度も読んだ同じ作品の新たな一面を知ることができたのも嬉しかったです。

例えば村上春樹の小説をあまり読んだことのない私には「作風が春樹に似てる」ことには気づかなかったし、これを機に逆輸入的に春樹文学に触れてみたくなりました。

倉本さんが言っていた「映画に対して目配せがいっぱいある」という点も映画に疎い私には気づかなかったところ。

確かに「光は流れる水のように」という短編では登場人物がスターウォーズを語っていたり、そこに出て来る宇宙船を作るシーンがあった。スターウォーズ好きの私としてはそのシーンにわくわくしたので、他の映画に対する目配せにも気づいてたらもっと楽しめたのかなぁなんて思ったり。

自分では持てなかった視点や感想に触れられるという読書会の醍醐味を味わえました。

 

 

イベントの最後には他の台湾文学の作品も紹介されて、中でも気になったのは王聡威が大阪市母子餓死事件を素材にして書いた『ここにいる』や、台湾原住民作家パタイが琉球人遭難事件をモチーフに書いた『暗礁』。

台湾文学は呉明益の作品しか読んだことなくて、ちょうど次に挑戦しようと思っていたのが『ここにいる』だったし、

台湾の原住民については呉明益の『自転車泥棒』で少し触れられていて気になっていたので『暗礁』もぜひ読んでみたいなぁ。

 

ここにいる (エクス・リブリス)

ここにいる (エクス・リブリス)

 

 

 

暗礁

暗礁

 

 旅行でも韓国の後に台湾のブームがきたように、今来ている韓国文学のブームの後は台湾文学ブームが来るかも…。

 

今回参加した「アジア文学への誘い」は第1回目ということでしたが、今後も日本を含むアジア文学を横断的に読んでいくそうで、今後は中国韓国チベットの小説を課題図書に開催されるそう。

まずは各国の課題本を読んでみたい。そして行けそうだったらまた行きたいです。