本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

馬鹿と伊藤は使いよう。

伊藤は勝ち続ける。周囲の人間を傷つけ続ける。たぶん、一生。勝てるわけがない。だって、伊藤は永久に土俵に立たないから。愛してもらえるのを、認めてもらえるのを、ただ石のように強情に待っているだけ。自分を受け入れない人間は静かに呪う。結局、自分…

今村夏子さんのぞわぞわざわざわ

固くしばってある袋の口を少しだけひろげてなかの空気を吸いこむと、あのクリスマスの日のできごとや、それ以外の日々のことまで思いだされて、いつまでもスーハースーハーしながら泣いたり笑ったりできるのだ。もうとっくに、お好み焼きのにおいは消えてし…

読書日記 「列車」

誰だってそうであろうが、見送り人にとって、この発車前の三分間ぐらい閉口なものはない。言うべきことは、すっかり言いつくしてあるし、ただむなしく顔を見合わせているばかりなのである。まして今のこの場合、私はその言うべき言葉さえなにひとつ考えつか…

『文豪お墓まいり記』 山崎ナオコーラ

文章によって浮かび上がった人の影に憧れるというのは、おそらく誰もが経験するものだと思う。これは人間らしい感覚で、とても面白い。誰かの目を通して他人というものを覗く、ということを楽しめるのは人間だけだ。 文學界で連載時から楽しませてもらってい…

みずみずむずむず町屋良平

巨大な後悔とか、自己嫌悪、死んでしまいたい自己否定のさなかでも、ぼくは人生がおもしろかった。こんなの、神秘いがいのなんなのだろう? 表紙を見た時からなんとなくの予感はあったけど、本を開いたらきらっきらした青春が流れてきた。あまりにもきらっき…

顔も見えず声も聞こえない遠くの友達

久しぶりに韓国文学を読んだ。 やっぱり好きだった。 同じ作家さんの作品でなくても、どれもいい。 もう10人程の韓国の作家さんの作品を読んできたけどどれも好きで、「これはあんまり…」と思うものがなかった。 これはなんなんだろう。 いい作品ばかり日本…

読書日記 歩き読書禁止条例

前から本を読みながら歩いてくる人がいた。 ブックカバーをつけていないようだったので、すれ違う時に表紙をガン見したら村田沙耶香さんの『コンビニ人間』の文庫だった。 後ろの方のページを見ていた。 後ろの方といえば中村文則さんの解説だ。 この人は中…