2019-01-01から1年間の記事一覧
今年は積ん読を30冊読む、というのを目標にしていて、その達成まで後2冊を残すところまできた。 なので、長年積ん読にしていたカズオ・イシグロの『日の名残り』を読み始めたのだけど、これが今見返しているドラマ『ダウントン・アビー』のお陰でイメージし…
私たちが話をしていて、つまらない相手というのがいますね。こちらの話をぜんぜん聴いていない人です。 なんで私の話を聴いてくれないかというと、先方にはこちらの言うことが全部わかっているからです(少なくともご本人はそう思っているからです)。 その…
ある朝、うまれたばかりのもんしろ蝶が、池のそばにきた。そして草の葉につかまって、池のおもてにうつる自分のすがたにみとれ、おもわず「ま、きれい!」とつぶやいた。 池は、くすっと笑っていった。 「ああ。あんたはとてもきれいだよ」 ほんとうに〈うま…
下北沢のB&Bで行われた三宅香帆さんとチェコ好き(和田真里奈)さんのトークイベントに行ってきました。 bookandbeer.com 三宅さんのことはこのブログでもちょこちょこ言及しているし、すっかりファンなのですが、今回イベントに参加するのは初めて。(実は…
最近フェミニズムの本を読むのが楽しくて何冊も続けて読んでいる。 楽しいだけではなくて、自分の無知さに気づいて、自分がいかにのうのうと生きていたかを知ることでちょっと恥ずかしくもなる。 またフェミニズムは、旧来的な男性にとっては、居たたまれな…
「真面目な話さあ。世界ってだな。常識とか、本能とか、倫理とか、確固たるものみたいにみんな言うけどさ。実際には変容していくもんだと思うよ。お前が感じてるみたいにここ最近いきなりの話じゃなくてさ。ずっと昔から変容し続けてきたんだよ。」 いまだに…
私たちはそろそろ「愛される女」に憧れるのを卒業しなくてはいけなくて、これからは「きちんと意見を言える女」を目指していくべきなのだろう。 もちろん「愛される女」なんかよりも、ずっとハードルが高い。 日頃から趣味や仕事の話をして、互いに信頼を重…
エミール・デュルケムは、私たちが「神」だと思っているものは、実は「社会」である、と言った。祈りが届くかどうかは、「社会」が決める。災厄をもたらす悪しき神もいる。それと同じように社会自体が、自分自身の破滅にむかって突き進むこともある。神も社…
はいはい。正しい正しい。誠実誠実。 思い出して、由布子は笑ってしまう。 なーんにも言ってないことと同じ言葉を掲げて、誠実ぶって。気持ち良さそー。 話者である自分は、誠実にこの問題に正しく向き合っていて、真摯で、社会に対して正義を祈ってる存在で…
「やれやれ」と、水力技師はロンドンに戻る列車の座席に座ると、もの憂い顔で言った。「たいした仕事でしたよ!親指はなくすし。五十ギニーの報酬はもらえない。いったい何を得たと言えるでしょう?」 「経験ですよ」と、ホームズは笑いながら言った。「経験…
陛下は、御自分を空虚だと思っておられます。 際限もなく空虚だとおもっておられるところに、智者も勇者も入ることができます。そのあたりのつまらぬ智者よりも御自分は不智だと思っておられるし、そのあたりの力自慢程度の男よりも御自分は不勇だと思ってお…
宗教の自由を説く人は多いけれど、だいたいが「私は特定の宗教に属してるわけではないですが」という前置きをしている。その前置きがなかったなら、特定の宗教を信じていたら、説得力も誠実さも増すのにな、と聞く度に思う。全く別のものが見えていて、それ…
桜木紫乃さんの『緋の河』を読んだ。 桜木紫乃さんの作品を読むのは初めてだったので、好きになれるかどうかどきどきだったけど、これがもう。良かった。 カルーセル麻紀さんをモデルにした主人公が「あたしはあたしになる」と、自分が納得する自分自身を目…
『イジェアウェレへ フェミニスト宣言、15の提案』は作者のチママンダが、女の子を出産した友達に、どうしたら「女だから」という理由でふりかかる、理不尽でマイナスな体験をさせずに子育てできる?と尋ねられたことをきっかけに出来た本。 チママンダ・ン…
彼女の頭には夢と計画が詰まっている。まだ世界が変えられると信じている。反抗する勇気があり、ここで自分の未来を築こうとしている。わたしはこの子を愛おしく感じているし、その根性をうらやましく思うところもある。と同時に、自分自身のことを考えて落…
三谷幸喜さん作・演出の舞台、「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」を観に行けることになったので、今月はホームズ作品読破が目標です。 三谷さんが日本を舞台にリメイクしたドラマ、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」も「アクロイド殺し」…
小倉美惠子『オオカミの護符』を読んだ。 この本はオオカミ信仰、山岳信仰について、人々がどのように「おイヌ様」や「お山」に信仰してきたのか、どんな風に儀式が行われていたのか、生活にどんなふうに根差していたのかが書いてあるノンフィクション。 私…
「遠く」というのは、ゆくことはできても、もどることのできないものだ。おとなのきみは、そのことを知っている。おとなのきみは、子どものきみにもう二どともどれないほど、遠くまできてしまったからだ。 子どものきみは、ある日ふと、もう誰からも「遠くへ…
「光」の持つ表裏と矛盾と魅惑。光の中で、ある人は癒しを得、ある人は心痛い現実に直面する。私たちが人に生まれた瞬間から、運命的に知っているもの。それは時に痛みであり、共感であり、懐かしさでもある。違うのは、それにいつ気付き、どう受け止めるか…
「でも、多様性っていいことなんでしょ?」 「うん」 「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」 「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」 「楽じゃないものが、どうしていいの?」 「楽ばっか…
古谷田奈月さんの『望むのは』という小説は、お隣にゴリラが住んでいる中学生が主人公だ。 ゴリラみたいな外見でもなく、そういうあだ名なわけでもなく、完全にゴリラ。といっても人間と同じように話すし、普通に生活をしているゴリラだ。 そのお隣ゴリラさ…
最初から自分と違う人の努力の物語、生きてきた時代や世界が違う立派な人の物語は受け入れられても、身近な人の立派な物語は怖いんです。なぜ怖いのか、それは「努力すれば自分にもできるかもしれない」からです。 「努力すれば自分にもできるかもしれないの…
今年の初めにプリキュアを見てからなんとなくハマってしまって、今ではローカル局で再放送されている過去シリーズも見ていたりして、なんかもうすっかりプリキュア好きになってしまっている。 まさかこの年で、なんの前触れもなくハマるとは。急展開すぎて未…
「健やかなる時も病める時も適度な距離感を」 そんな言葉がふと浮かんできた時があった。 なぜそんな言葉が浮かんだのか、その前に何を考えていたのかは覚えていない。 しばらく忘れていたけれど、私なりの真実味を帯びたその言葉をまた思い出したのは、高山…
男だから、女だから。そんなことはどうでもよくて。あなただから恋に落ちた。 恋の純度の高さ、その息苦しさ、その恍惚。 生のみ生のままで 上 作者: 綿矢りさ 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/06/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 生…
河井寛次郎は、宴席で、陶工たちにそう説明した。「有名」だからいい、というわけじゃない。むしろ、「無名」であることに誇りを持ちなさい、と。何百年、何千年もまえの人間たちの、美しいものを愛する心が、いまに伝わり、いまなお息づいている。──それが…
三宅香帆さんの書評本『人生を狂わす名著50』で紹介されていた米原万理さんの『オリガ・モリソヴナの反語法』を読みました。 三宅さんの文章はほんとに楽しくて、紹介されてる本もいつも魅力的に書かれているのですが、実際その本を読んでみても面白い。 も…
だけど人間は、自分の物差しだけで自分自身を確認できるほど強くない。そもそも物差しだってそれ自体だけでこの世に存在することはできない。ナンバーワンよりオンリーワンは素晴らしい考え方だけれど、それはつまり、これまでは見知らぬ誰かが行なってくれ…
今年の目標の1つ、新潮文庫の太宰治作品読破がまったくすすんでいません…。 なんでだろ。月に2冊は読むはずなのに。 でも太宰治は意外と読むやすくて、読み始めたらするする読めてしまうのがいいところ。 昨日は短編集『ヴィヨンの妻』の「おさん」のところ…
引き続き『田辺聖子の小倉百人一首』を読み進めています。 枕元に置いて寝る前や、朝起きたけど布団から出る気がわかない時に、ちまちま読んでいるのでなかなか読み進められませんが、この速度でゆっくり読むの贅沢でいい感じ。 田辺聖子の小倉百人一首 (角…