本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

『星の子』 今村夏子

宗教の自由を説く人は多いけれど、だいたいが「私は特定の宗教に属してるわけではないですが」という前置きをしている。
その前置きがなかったなら、特定の宗教を信じていたら、説得力も誠実さも増すのにな、と聞く度に思う。

全く別のものが見えていて、それぞれ別々のものを信じているのに、何を信じるかは自由だと言えるならば、相手を尊重していると本当に思えるのに。
何も信じていない人が宗教の自由を説いても、「どっちでもよくない?」と言っているように聞こえないか。
そうは言っても、本当に特定の宗教に属していないんだからどうしようもない。

でも何かを信じている人が、「なにを信じるかは自由だけどね」と言った瞬間、今度はその人の信じているものが軽くなってしまうのだろうか。

 


同じものを見て、同じものを信じていなければ、わかりあえていると言えないのかな。信頼し合えないのかな。

好きな人と同じものを見たい。同じことを感じたいと思うのはどうしてだろう。

異質なものに対する糾弾や激しい同調圧力といったものはなくて、ささやかな失望と淡い希望を繰り返す物語は、激しさがない分、先が読めなくて、やるせなく悲しくなった。

 

 

星の子

星の子