本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

かつて挫折した村上春樹を読んでみたらちょっとハマった。

村上春樹は高校生の頃にデビュー作辺りの何冊かを読んだけど、良さがわからなかった。部活の同期と先輩が春樹作品について熱く語っているのを横目で見て、羨ましく思っていた。

でも村上春樹は、新作を出すたびに話題になるし、ハルキストと呼ばれるような熱狂的なファンもいるし、ノーベル賞を取るのではないかと期待されている作家だし、いつかはハマりたい!ハマるまではいかなくとも、その良さがわかるようになりたい!と思っていた。が、読みたい本は他にも沢山あり、読まなきゃいけない本も沢山ある中でなかなかきっかけが掴めず先延ばしにしていた。

最近、その積年の思いをやっと叶えた。そしてちょっとハマった。

 

 

村上春樹に再挑戦する。

村上春樹に再挑戦するきっかけになったのは、「渡辺祐真(スケザネ)の「現代文学」から考える「世界」と「言葉」~作品の読み方から感想の書き方まで~」という講座で最新作の『街とその不確かな壁』が扱われることになったから。

 

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https://peatix.com/event/3586258peatix.com

 

この講座内容が発表される前は読む気はなかったけれど、毎回楽しく参加している講座なので、予習として読むことを決め、そして書評家の三宅香帆さんがTwitterのスペースで『街とその不確かな壁』は「春樹初心者におすすめする作品ではない、他の作品読んでからの方がいい」と言っていたのを思い出し、これを機に色々読んでみよう!と決意した。

読んでみたら面白かった。あれだけ良さがわからなかったのになぜだか面白かった。

 

 

アフターダーク』と『ノルウェイの森

まず何を読んだらいいのか迷ったものの、図書館にあってちょうど良い厚みだった『アフターダーク』と村上春樹といったらこれなのでは?という『ノルウェイの森』を読むことにした。これが後に、我ながら良い入り方をしたな?と感じるくらい良い選書だった。

 

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アフターダーク』は深夜という時間が舞台になっており、その時間帯故の親密さとか、静けさや暗闇の中で人の存在感が高まる感じが好きだったし、『ノルウェイの森』はなんだかよくわからないところもあるし、首を傾げたくなる部分もあれど、なぜか好きだった。

 

このなぜかわからないけど好きっていうの、好きの分類の中ではなかなか厄介だ。わからない、わからないけど好き、わからないから気になっちゃう、余計に好きになってちゃうという厄介さ。

 

最初に読んだ本で、単純に「好き!」と感じ、次に読んだ本で「なんかよくわかんないけど好き….」と、うまく言語化できない好きポイントを突かれるというのも、沼に引き摺り込まれそうな予感のする厄介な入り方である。

 

村上春樹作品の家事

作品群の良さはまだ具体的にわからないけれど、読んでみてわかったこともいくつかある。それは、村上春樹って「クリーム色のカーテンは日焼けが目立たない」とかいってるし、ちゃんと生活してたんだな!ということ。抽象的なことばかり言っていて、うちに籠ってばかりなナルシストというイメージがあったので、それが意外だった。

しかし家事はちゃんとしているけど、生活感がない。ひとつひとつがなんか洒落臭い感じもある。料理とか掃除とか全部作業っぽい。家事は家事で、それ以上でもそれ以下でもない、ただの作業という感じがする。

家事ってもっと雑味があるのでは。「料理より掃除の方が好きだなぁ」とか「面倒くさいけどやらなきゃ」とかそういった感情?生活感?が村上春樹作品の家事には感じられなかった。

 

村上春樹吉本ばなな

じゃあ作業ではなく、雑味のある家事を書いている作家って誰だ?と考えて思い浮かんだのが、吉本ばななだ。吉本ばななの書く家事は生活感がある。家事の描写にその人の感情や人生、生活が乗っているような気がする。

そう考えると村上春樹吉本ばななって関連性がないように見えるけど、どちらも「喪失」をテーマにする小説をよく書いている。村上春樹に関しては『アフターダーク』と『ノルウェイの森』を読んだだけだし、『ねじまき鳥クロニクル』は最初の方で挫折しただけだけど、確かにそのイメージはある。

村上春樹は女性との別離を、吉本ばななは家族との死別をよく書いている。だけど、その喪失の書き方やそこからの立ち直り方が全然違う。

 

村上春樹吉本ばななって、似ているけど全然違うという気づきは、2人の作品をさらに読み進めよく考えていくと面白そうだ。この2人の組み合わせは意外だけど、その意外さが面白い。

 

その発見があったのも楽しくて、村上春樹に再挑戦してみて良かったなぁと思う。

沢山本を読んでいくと、様々な作品が自分の中で積み上がっていくのが面白い。沢山蓄積したものの中で比較検討ができて、今までよくわからなかった作品の良さがわかるようになったり、より良さがわかるようになったりする。それが面白い。

あの時わからなかった村上春樹の良さがわかるようになっていたのも、あれから沢山本を読んできたからなのかなぁと思うと、今までの読書体験が全部まるっと活きているような気がして嬉しくなった。

 

まとめ(具体的なケチと曖昧な好き)

村上春樹の良さがわかるようになったとはいえ、良く思わないこと、例えば洒落臭いだとか気持ち悪いとか、「○○みたいに」が多いよ!(洒落臭いの亜流)とか、ケチをつけたくなる部分も多い。

ケチをつけたくなる部分は具体的に挙げられるのだけど、良いな好きだなと思うところは、どこがそうなのかわからない。どこが面白いのかはよくわからない。

そうした現象が起きていることも含めてこれはもう、村上春樹にハマった…のかもしれないので、これから過去作をちょくちょく読んでいきたいと思っている。

 

この後に『街とその不確かな壁』の感想を書こうとしていたのですが、長くなりすぎるので分けます。

これっておじさんが40すぎてセルフケアできるようになった話だよねっていうことを今長々と書いています…。