本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ

「わたしたちは本の友ね」彼女は、〝空は青い〟とか〝パリは世界一の街だ〟というような、確信のある口調で言った。わたしは心の友については懐疑的だが、本の友は信じることができた。

 

物語は、1939年パリ、オディールが図書館での仕事を得ようと、本の分類法を唱えながら面接へ向かうシーンから始まる。

デューイ十進法では図書館にある本全てを分類し、全ての本に数字を当てはめる。学校で習ったそんな知識を復習しつつ面接に向かった彼女だけれど、結局面接を有利に進め採用に至ったのはそんな知識だけでなく、何にも分類されない本への愛、どんな知識にも負けない本への信頼だった。

読み始めてすぐにこの物語のことを好きになった。冒頭だけでなく、この本はずっと本への愛と信頼が溢れていた。

 

オディールは「女性は家庭にいるべき」という父親の反対を押し切り、図書館で司書として働く。仕事をする働くということは、社会との接点を持ち、本の世界から飛び出し、現実を知るということでもある。

当然本に書かれているようにうまくいかないこともある、本で得た知識が役に立たないこともある。

だからといって本の価値が下がるわけではない。つらい現実に寄り添ってくれる本、忘れさせてくれる本、癒してくれる本がある。

 

オディールの人生がどんなに波乱でも、やがて戦争が始まり、彼女を取り巻く世界が大きく変わっていっても、彼女の中には、寛大な付添人として本がいた。

ナチス支配下のパリで人々に寄り添う本を守り、図書館に来ることができなくなった人々に危険を犯してでも本を届け続けた、オディールや同僚たちは、本の持つ力を誰よりも知っていたし、本を愛し信頼していた。

この物語は事実に基づいている部分も多くあり、オディールのような司書も実在していたようだ。

読めばさらに本への愛が深まるこの物語をたくさんの人に読んで欲しい。

 

「誰にでも、決定的に自分を変えた本というものがあります」わたしは言った。「自分が独りぼっちじゃないと教えてくれる本です。あなたの場合はなんですか?」