本読みの芋づる

芋づる式読書日記。

読書日記『蓮と刀』

答えは簡単━━フロイト自身、それを危険だと思わなかったから。危険だと思う必要がなかったから。彼には、それに関して疚しい所が一つもなかったから。平気でそれを口に出来たから。彼は母親と性行をしたいと思ったことなど、幼児期から始めて、一度もなかったことを、自分でチャーンと知っていたから。性行したくないどころの騒ぎではない、彼は、母親なんか死んだって一向に構わないと思っていた。

 

書評家の三宅香帆さんが絶版本を紹介する連載を始めて、それの第一回目に取り上げられていた橋本治の『蓮と刀』を読み始めた。

これがまぁもう難しい。

橋本治フロイトの言っていることを事細かに読み解いて、フロイト自己欺瞞を暴いていくような内容なんだけど、フロイトの言ってることもわからなければ、橋本治の解説も大してわからん。ただ、橋本治が要するにフロイトが言いたいことはこれだってまとめてくれたところだけはなんとなくわかる、というレベル。

 

フロイトエディプス・コンプレックスというのを知ったのは、大学の一年生の頃だったけど、男の子は深層心理では父親を殺して母親と性行したいと思っている、というのが気持ち悪かったのはもちろん、フロイトそんなことよく言えたな?自分にもお父さんお母さんいるだろうにそこ気まずくなかったの??とも思ってずっと、フロイトの親子関係が気になっていた。

 

橋本治がいうには、フロイトはお父さんのことが嫌いで怖くて、その気持ちをどうにか理由付るために母親を引っ張ってきて、エディプス・コンプレックスを作り出したのだ、とのことだった。

 

長年の疑問がわかってすっきりしたんだけど、一方で「本当か…?」とも思ってる。

私が理解できたのはまとめの部分だけで、その途中の論理をほとんど理解してない。わかりやすいとこだけ見て、わかった!と思ってるけど大丈夫かな、と不安になる。

でも頭いい人が言ってることだから本当のことなんだろうな、とも思う。

だけど「わかりやすいとこだけ見てわかった気になる」が危ういのと同じぐらい、「自分より頭のいい人が言ってるからそれが正解」というのも危うい。

 

最近その結論に至るまでの論理展開もわかるし、結論やまとめも理解できる、そんな話ばかりに触れてきて、こんな難しい本読んでなかった。久しぶりに読んだ。

でも私の頭で全部理解できる話なんてものすごく範囲が狭い。難しい話を読んでいけば理解できる領域って広がっていくんだろうか。頭良くなりたい。理解できる話を増やしたい。

 

 

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三宅さんが紹介した本を読んで「む、難しい…」と思うのは何度目だろう…。

『時間の比較社会学』も『成熟と喪失』もそうで、その度にこれを読める三宅さんすごい!と思うのであった。

 

 

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